コラーゲンは、細胞外マトリックスの主要成分として、体を構成する全タンパク質の約30%を占めており、全身の組織・器官の物理的な保持は勿論のこと、細胞の増殖・分化などといった細胞活動にも重要な役割を担っています。近年、コラーゲンは、食品添加物や化粧品添加成分など美容の分野で特に注目されていますが、これからの超高齢化社会では、年齢と共に減少するコラーゲン量を保持するなど、健康分野でも研究・開発が必要となっています。また、角膜や骨といった重要部位を構成するコラーゲン線維は生体修復材料として、さらに、コラーゲン異常を起因とする難治性疾患(下記)の診断法や治療法を開発する上でも、極めて重要な研究ターゲットとなっています。
これまでコラーゲンには28種類の型が知られていますが、全身のコラーゲンの90%以上はI型です。I型コラーゲンは、骨組織、皮質骨、靱帯や腱といった全身の組織を形成していますので、その量・質的な異常は、関節リウマチなどの膠原病や、肝硬変など臓器線維症といった全身疾患に至ります。これらコラーゲン異常を起因とする疾患は、その多くが治療法の確立されていない厚生労働省認定の難治性疾患となっている点でも研究が急がれています。
コラーゲンタンパク質は、その豊富さから、古くより組織学レベルで研究される一方、タンパク質合成、プロセシング、輸送、分泌といった生合成過程に関する分子細胞レベルでの情報は未だ乏しく、これらの情報不足がコラーゲン異常を起因とする疾患の治療法開発を難しくしている一因であると考えられます。
私達の研究グループは、コラーゲンタンパク質の可視化に取り組んでおり、これまで[ヒト]I型プロコラーゲンa1鎖の可視化に成功しています。この可視化[ヒト]I型プロコラーゲンと共焦点顕微鏡を組み合わせることで「ライブイメージング解析」が可能となり、これまで未解明であったコラーゲンのプロセシング、輸送、および分泌といった生合成過程の全てが分子細胞レベルで理解可能となってきています。
今後、可視化コラーゲンを用いた解析を進め、コラーゲン異常を起因とする肝線維症などの難治性疾患の早期診断および治療法の開発を目指しています(模式図)。また、コラーゲン生合成過程の分子細胞生物学的な情報をもとに、今よりももっと優れた健康用品、美容用品も開発し、広く社会に貢献していたいと考えています。